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職業選択とセルフ・カウンセリング (2/6) |
□就職活動中の ある学生からの相談 ある時、私は、Mさんという就職活動中の女子学生から相談を受けました。 Mさんは、就職活動をするなかで、自分に自信が持てなくなっていたのです。筆記試験ではなく、面接で落とされたことで、自分の人間性を否定されたように感じて、とても落ち込んでいました。 私は、そのMさんに、次のようなことを伝えました。 就職活動では、いろいろな経験をします。会社から不採用の通知を受けることもあるでしょう。けれども、そのことで落ち込む必要はないのです。不採用という結果は、たまたま、その会社と合わなかっただけです。その人の存在意味とは、何も関係ありません。 私は、Mさんに、就職活動をするにあたって、どのようにして会社選びをしているのか、聞いてみました。 Mさんは、自分には事務しかできない、と考えていました。事務職だったら、どこの会社に勤めても同じだから、高い給料が貰えて、休日が多くて、勤務時間が短い方がよい、という考えでした。つまり、給与の額や、休日の日数や、勤務時間などを基準にして、希望する会社を選択していたわけです。 私は、Mさんに提案してみました。就職活動をこのまま続ける前に、ちょっと立ちどまって、どのような会社に入って、どのような活動をしたいのかを、自分の価値観に照らして、一度、じっくりと考えてみたらどうか、と。さらに、そのために役立つのではないかと思い、ゼミでまとめた自己形成史分析の論文を、読み返してみることを勧めてみました。 □Mさんの職業選択 −自己形成史をふり返って− Mさんは、自分の自己形成史分析をした卒業論文を読み返してゆきました。 Mさんは、幼児期、学童期と、熱心にピアノのレッスンに通っていました。中学、高校では、ブラスバンド部に所属し、トランペットを担当しました。合奏の楽しさを知り、仲間と一つの音楽を作ってゆくことに夢中になりました。 大学時代は映画研究会に所属し、自主制作の映画の脚本を書いていました。それは、主人公たちが、音楽を通じて自分を発見してゆく、という内容のものでした。 Mさんは、改めて自己形成史分析をふり返ってみて、自分にとって、音楽がとても重要な位置を占めていたことを再確認しました。音楽を通じて、多くの大切な経験をしてきたのです。 そんな経験は、すべて、幼い頃通っていたピアノ教室から始まったのです。 そのピアノ教室を開いていた、Yという楽器会社でなら、やりがいを感じて仕事ができるかもしれない、とMさんは考えました。そして、その会社の資料を取り寄せ、試験を受ける準備を始めました。 |
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